« 2015年11月 | トップページ | 2016年3月 »

2016年2月

2016年2月16日 (火)

「人形浄瑠璃」が草加にやってくる

 2月12日、草加市文化会館で5月に行われる『淡路人形浄瑠璃(あわじにんぎょうじょうるり) 草加公演2016』のプレイベントに参加させていただいた。記者席ということで、一番前に陣取らせていただき、人形を間近で見ることができた。ありがとうございます。

 「淡路人形浄瑠璃」は500年の歴史があり、国指定重要無形民俗文化財に指定されている。

 公演は「淡路人形座」。淡路島に常設会館があって、連日公演を行っている。草加市では初の公演。

 さて、恥ずかしながら私は日本のこういった古典芸能(歌舞伎や浄瑠璃、文楽)にほとんど触れたことが無く、もちろん「人形浄瑠璃」も初体験。プレイベントでは、「淡路人形座」の支配人坂東氏が、実際の人形を操作しながら、明快で親しみ易い語り口で「人形浄瑠璃」の魅力を語ってくださった。

20160212_1

 「人形浄瑠璃」は江戸時代以降、「歌舞伎」とともに人気を集めた伝統演劇だ。古典芸能になじみのない私のような人間には、「浄瑠璃」は人形が登場する伝統芸能であることくらいしか思い浮かばず、字面から難しいと思ってしまうが、「そんなことはないです」と坂東氏。


 「浄瑠璃」の名前は、牛若丸の恋人とされる「浄瑠璃姫」から。「浄瑠璃姫の物語」を太夫と呼ばれる語り部が語る芸能が「浄瑠璃」と呼ばれ、別の物語にもこの名が使われるようになったという。人の名前だったのか。。

 

 これが室町時代(15世紀)。

 

 江戸時代(文禄・慶長年間)、京都で「浄瑠璃」と「人形操り」と「三味線」とが結びつき、「人形浄瑠璃」が生まれたのだという。ちなみに「文楽」は人形浄瑠璃専門の劇場の名前だが、今は代名詞のように使われている。Wikipediaでは、「人形浄瑠璃」で検索すると「文楽」に飛ばされる。

 ただ、なぜか私の中には、歌舞伎と人形浄瑠璃が同じ物語を演じていたというイメージが無かった。どうしてだろう。坂東氏は「人形浄瑠璃と歌舞伎とほぼ兄弟みたいなもの。人形浄瑠璃でヒットすると、歌舞伎で上演される」と説明されていた。

 超有名な近松門左衛門は「曽根崎心中」「新充填の網島」など今で言うベストセラー作家。今ちょうどNHKで「近松門左衛門」が主役の「ちかえもん」が放送されている。〆切に追われるふつーの人間として描かれていて面白い。
 イベントでは、人形浄瑠璃の魅力として、実際の人形の操作(裏側)を見せて下さって、これが一番興味深かった。舞台ではこんな近くで人形を見られないわけで、とっても貴重な体験だった。

20160212_1_3
※人形を操る坂東氏。表情の硬い人形に、どうやって感情を表現させるのか、ちょっとしたしぐさの差で、笑いと泣きを区別させる、そのテクニックには目からウロコ。

20160212_1_1
※黒目、口が動くだけで、表情がとても豊かになる。

 実は、お話を聞きながら、なぜ淡路島で人形が?という疑問が湧いていた。

 解説のパンフレットには、「淡路人形起源伝承」として説明されている。でもこれは伝説だ。
 実際にはどうだったんだろうとネットを探していたら、「阿波人形浄瑠璃物語」※という「徳島新聞」連載記事のアーカイブを見つけた。2002年の記事で、かなり詳しく紹介されている。

 以下ごくかんたんな流れ。
 発祥は平安時代末期。えびす様を祀る西宮神社(現在兵庫県西宮市にある)では、人形を使った神徳の宣伝をしており、その神事(人形操り)を務めていたのが淡路の荘園農民だった。
 室町時代には、荘園が周辺大名に取り込まれて彼らは仕事を失い、淡路島に帰った。その子孫が淡路の人形座を始め、栄えた。
 江戸時代初期には、淡路島を支配下に置いた蜂須賀氏が、淡路を支配するにあたって「人形回しを生業とする農民」である「道薫坊廻百姓(どうくんぼうまわしひゃくしょう)」という身分を作った。淡路島だけにある特殊な身分で、1789年頃道薫坊廻百姓は930人もいたらしい。島の農民の64%が道薫坊廻百姓だったという記録がある。彼らは約40の人形座を結成して、農閑期に西日本を中心として全国を興行したという。

 もともと淡路島は『古事記』『日本書紀』によれば。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)が日本列島で最初に創造した島だという。つまり「日本発祥の地」でもあるわけだ。淡路島の観光のキーワードは「国生神話の島」。「淡路人形起源伝承」に登場する「百太夫」は、イザナギ・イザナミの最初の子供「蛭子(ひるこ/えびす)」を助け、後に淡路島に人形操りを伝えた人間として登場するのだ。
 

 今回上演される演目は、
「戎舞(えびすまい)」。先に書いた西宮神社の進行の宣伝の舞が伝わったもの。
「奥州秀衡有鬠壻 鞍馬山の段(おうしゅうひでひらうはつのはなむこ くらまやまのだん)」。
「鬼一法眼三略の巻 五条橋の段(きいちほうげんさんりゃくのまき ごじょうばしのだん)」こちらは有名な牛若丸と弁慶のを描いた場面。

 タイトルはかなりとっつきにくいが、内容紹介を見ると楽しそうだ。
 こんなリーズナブルな価格で古典芸能を楽しめる機会はめったにないと思う。発売は2月20日から。みなさんぜひどうぞ。

 草加市文化会館 淡路人形浄瑠璃 草加公演2016 


※補足
・徳島新聞の記事。リンク先のページは、第1回。リストはページの下にある。
少しばかり見にくいが、下から日付順に並んでいる。人形浄瑠璃の始まりから現在(2002年当時)の状況まで、本になるくらいの情報量。以下のページを参考にさせていただいた。

・人形劇といえば。
イベントで紹介された、顔ががっと変わる日本人形、「人形浄瑠璃」は初体験の私だが、ものすごくなじみがある。それはNHKで1973年(昭和48年)から1975年(昭和50年)まで放映された『新八犬伝』(ファンページ)という人形劇で見ていたからだ。今や人形作家として有名な辻村ジュサブロー(現在は辻村寿三郎)が300体以上人形を制作していた。そこに顔ががっと変化する人形が登場していたのだ。

・草加元気放送局 フルーティスト宮川さんのブログ

淡路人形浄瑠璃 草加公演2016のプレイベントに参加させていただきました

私のブログとは内容のポイントが全然違っているところが面白いです。

« 2015年11月 | トップページ | 2016年3月 »